ミラノ雑感

言葉を使うということに向き合う場所。

イタリアとロックダウン

イタリアでは感染者がこの数週間で急増し、この日曜日に首相令(DPCM)が出されて、昨日から正式にミニ・ロックダウンに入りました。

 

既に先週、首相令が出されて、高等学校は隔日で通学するようになり、オフィスは75%までスマートワーキングに切り替えることになり、夜23時から朝の5時までは外出禁止、となっていたのですが、今回の首相令ではさらに以下の項目(一部)が増えて、実質的にロックダウンに近くなっています。

 

高等学校はほぼ全て遠隔授業に変更。

外出は仕事・学校など不要不急でない限り控えることを強く推奨する。

バール・レストランは、週末を含め朝5時から18時までの間営業可。

ジム・室内運動は全て禁止。

 

正式な政府の発表前に、FBに出されたレストラン経営者のコメントが大きな反響を呼び、新聞でも取り上げられました。多くのイタリア人の共感を呼んだのは、個人商店経営者の困難な状況を想像するのは難くない今の状況に加え、2回目のロックダウンによって、多かれ少なかれみんなが心理的な衝撃を受けているからではないかと思います。

 

www.corriere.it

FBに載せられたコメントは次のようなものでした。

「これは私の父です。何もない所から一人でこのレストランを築き上げた人です。ヴェネトの貧しい小作人の家族の出で、家族の女たちは、子供に食べ物を与えるために、自分たちはお腹がすいていないと言い訳していたと言います。過剰なものは何も望まない、謙虚な人たちです。(中略)

その彼が、18時で閉店し、日曜日も休業しないといけなくなると聞いて、店先で座り込んでしまいました。『これはとどめの一撃だ』と言って…。(中略)仕事は私たちに尊厳を与えてくれる。その仕事まで取り上げてしまうなんて…。」

 

昨夜は、二度目のロックダウンを受けて、個人商店のオーナーや関係者、ジムやスポーツチームの運営者たちが抗議行動を起こしました。

 

video.corriere.it

 

春先に比べ制限内容は若干緩めとは言え、二度目のロックダウンは、最初のロックダウンよりも心理的には非常に重たく感じられます。仕事や生活の不安だけではない、なにか根源的な不安が、社会全体に漂っているような気がします。コンテ首相は抗議行動に対して、「私ももし(個人商店経営者などの)彼らの立場にいたら、抗議行動を起こすと思う。抗議行動自体は理解できる。ただそこに、(ネオナチや反社会的団体)暴動扇動するプロが多く含まれている。それには非常に気を付けなくてはいけない」と言っていますが、こういう時期に極端な思想が成長して力を持ってくる可能性も見過ごせないということでしょう。

このロックダウンが明けるころ、世界は完全に変わってしまっているかもしれない。